ジョブレスマンの漫画感想ブログー時々漫画以外も

見た漫画やアニメの感想とか考察をします

富樫がハンターハンターで王道的落ちにもっていかない(もっていけない)わけ

 ハンターハンター幽々白書でおなじみの富樫義博。念の細かい設定や旅団編での叙情的な演出はお見事というほかない、素晴らしい漫画家である。しかし、ことハンターハンターにおいて一石を投じたい。

 章の終らせ方がすっきりしない。例えばハンター試験編。塔をチームで抜け出す試練や島でのナンバープレート争奪戦は、ピリピリとした緊張感があり特に当時小学生だった私には、他のジャンプ漫画と比べてとても刺激的だった。問題は最終試験の一対一のトーナメント戦。ゴンはハゲ(ニンジャのやつ)と戦うことになるが、結局ハゲがゴンの気持ちというか、性格に根負けするような形で終る。また、次章へのつながりを持たせたかったんだろうけど、キルアの試験違反によって試験全体が終了となる。いかんせんすっきりしない。さて、旅団編。これもすっきりしない。幻影旅団という中2心くすぐる最高の集団、陰獣との戦い、クラピカVSウヴォー、キルアとゴンが旅団に迫っていく緊迫のシーン、旅団がマフィア相手に暴れるシーン、団長VSキルアの父とじいさん、クラピカの仲間が旅団に追いつめられるところとか、パクノダとの掛け合いとか、その思いとか、本当に手に汗握る緊張の連続で、大大大大好きなんですけど、やっぱり終わり方が。結局クラピカは旅団殺してないし、旅団もクラピカ殺せてないし、いや、富樫先生も賢い方ですから、それをしない、できない理由も色々付けてたけど、でもやっぱりなんかすっきりしない。あとキメラアント編。ネテロ会長の爆弾とゴンさん化による戦いの終結。これもすっきりしないっていうか、もし漫画の中の現場にいたら、ああ、会長死んだけど虫倒せたぜ、で終ったんだろうけど、物語として王道的なすっきり感はないよね。ゴンはこっからあんまりでてこなくなるし。

 じゃあこれなんでなの?って考えたわけです。どれも王道的な、最後のボスを主人公が倒す、みたいな終り方がない。物語全体の主人公じゃなかったとしても、その章の主人公が宿敵をしっかり倒す、みたいな終り方がないんですよ。なんで?っていうと、もうとぐろでやっちゃってるんだよ!う~らめし~とかいうわかりやすい魅力的且つジャンプっぽい王道主人公が、VSとぐろで奇麗な、かつ完璧な王道を行くフィニッシュを決めちゃってる。もうあれ超えられないよね、ていうか、富樫先生のなかで、もうそこは描いたからいいかな、みたいな気持ちもあるかもしれないけど、とにかくう~らめし~VSとぐろを超えられないでしょ、ってことでもうやらないんだよ、多分。いや、絶対そうでしょ!幽白もとぐろ以降は王道展開じゃなくなったし。最後も変なおっさんがトーナメント勝って終るという。あれはあれで好きだけど。とにかく、結論は、うらめしVSとぐろでもうやっちゃって、それを超えられないと富樫先生がわかってるから、or、もうそこでやっちゃったからこの王道展開を描く気がない、ってことです!

 ちなみに、GI編はすっきり終ってる。ゴンがボマーを倒す。これの位置づけは、ゴンの修行成果をきっちり見せるものなのかなと。しかもその過程は中ボスを倒すぐらいの成長ね。クッパじゃなくて小クッパぐらいのボス。修行の成果をそのまま見せるだけで、倒せるレベルの相手です。ラスボスとかそれこそVSとぐろとかになると、それ以上の展開が必要になるんですけど、GI編はそこまでは行っていないと思う。だから、理論の中で終れたっていうか、ある意味ちょーすっきり終れたかなと。爽快感はその分薄いけど、それは全てのカードをそろえてゲームがクリアできたことで補われているのかなとも思います。ちなみに、俺の両手は機関銃ってありますが、なら腕を切り落として俺の両腕は大砲にすれば?と思ったのは私だけかな。

鬼滅の刃が人気になった要因(中年以降のおじさんにも人気?)

 

 鬼滅の刃がすごい人気になった。連載初期よりそこそこの人気はあったが、それでも時々本誌上位に食い込むぐらいで、基本的には真ん中ぐらいにいたようなイメージ。いや、ほんと曖昧な記憶だけど、アニメ化まではジャンプ本誌のトップにはいなかったように思う。光るものは確実にあった。かなり序盤の修行の話。狐面の錆兎と優しい女の子真菰。この話は本当、せつなくて、どこか温かくて、短編としてしっかりまとまっていて素晴らしい。修行の話って結構退屈になることが多いんですけど、ここでこの鬼滅の世界観がかなり表現されている。残酷で、でも優しくて、だから辛いし、怖い。抽象的な表現を並べてしまいましたが、そんな感じ。とにかく、大正を舞台にした和風ファンタジーで、最近のジャンプ漫画に少なかった「キャラの死を象徴的に且つ情緒的に描く」という、漫画として光るものは確かにあったんですが、しかし果たしてここまでの人気になるものかと言われれば、どうなのかなと。まあ、アニメ化ブーストと言ってしまえばそれでおしまいになってしまうわけなんですが、少し別の側面から考えてみようかなと。

 ちょっとヒントになったのが、テレビで有吉とか明石家さんまとかも嵌ってるって言ってたんですね。まあ、この二人が今から書く理由で好きになったかはわかりませんが。それは、ワンピース、ハンター、ナルト、ブリーチ以降少年ジャンプで複雑になったシナリオ、つまり組織図とか3対立構造とかを捨てて、それ以前の、聖闘士星矢とか北斗の拳とかみたいなわかりやすい正義の組織VS悪の組織にしたこと。戦隊ものみたいなね。ワンピとかハンターとか、ナルトもブリーチもだけど、二対立でもなければ、三対立でもなかったりする。人間関係が絡み合って、ぶっちゃけちゃんと追って読んでないとしんどくなったり、わからなくなったりしちゃう。ワンピとかハンターって言ったけど、ドラゴンボールフリーザ編ぐらいからちょっとシナリオが入り組み始めてる。まあワンピとかはさらに複雑だけど。鬼滅は本当にわかりやすい。敵の組織がいて、味方の組織がいて、だから子どもに受けるし、おっさんにも受けたのかなと。こういうのでいいんだよ、って。主人公も、冴羽とかケンシロウみたいに男らしいって感じはないけど、くよくよ複雑に悩むタイプじゃない。真っすぐに、不幸に立ち向かっていくタイプ。昭和の朝ドラの主人公みたいなね。これも中年より上のおっさんおばさん(おばさんにも受けたのかな?)に受けた理由のような気がする。

 ま、だからこそ、30も間近のワンピ世代の私には物足りなかったりする。せめて漫画のアクションシーンがもうちょっとかっこ良かったらね。ぶっちゃけキングダムのファルファルファル並みにひどくね?なんて、思ったり、思わなかったり。でも、最初にも書いたけど、残酷で、でも優しい感じは、最近のジャンプにはなかった雰囲気でやっぱり売れるだけの素地はあったのかなと。実は6巻までしか読んでないんですけどね。